Grand Duo * グラン・デュオ ―シューベルトは初恋花嫁を諦めない―

 ふふふ、と笑いながらわたしはベビーリーフとミニトマトを周囲に散らし、飾り付けを完成させる。シンプルなトーストとベーコンエッグに三種のベリーのフルーツヨーグルト。これにコーヒーを足せば、完璧なブレックファスト。
 今朝の彼は白い半そでシャツにブラウンのチノパンを履いている。対するわたしはアキフミが選んだエメラルドグリーンのシフォンワンピース。箪笥の肥やし状態だったワンピースを発掘した彼は、こういうときだから着てほしい、と言って手渡してきたのである。
 リゾート感のあるファッションをするのは久しぶりで、なんだか恥ずかしい気分になったが、彼に似合うと言われると嬉しくて、浮かれてしまう。

「いただきます」

 ふたりで手を合わせて食べるしあわせいっぱいな朝食。トーストには地元の乳牛で作ったバターをたっぷり塗って。目玉焼きはアキフミがすきだという半熟にしたから口のなかで濃厚な黄身がとろりとほぐれていく。ブルーベリー、ラズベリー、クランベリーをいれたヨーグルトも甘酸っぱくて素材の良さが存分に感じられる。

「もうすこしここでゆっくりしたいが、そうも言っていられないな」
「え、どうして?」
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