Grand Duo * グラン・デュオ ―シューベルトは初恋花嫁を諦めない―

「遺言書が見つかったんだ。俺は須磨寺からネメを嫁にしてもいいと許可を得たも同然。あとは俺の両親にお前を紹介して……」
「ちょ、ちょっと気が早いよ。まだ夫が死んで半年も経ってないのに」
「世間的には百日経過してるんだから問題ないだろ。それに相続の手続きに入る前に入籍だけでもした方がいいぞ。須磨寺の遺産を相続してから俺と結婚するとなると相続税の支払いがお前に向く。俺の庇護下に入っていればこっちで費用を捻出できるし、お前から土地とピアノを買い取る金が税金に変わるだけだ」
「……そういうもん?」

 法律の話をされると弱いわたしは結局アキフミに言い負かされて、近いうちに東京にいるという彼の両親に挨拶に行くというはなしを承諾させられるのだった。
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