私の知らない恋の話。
ほんとと嘘が混在する適当な発言をこぼして、ごめんね、また今度、ともえのもとに駆け寄った。


「え、なんできたの?」
「……心配、した」
「だからって……」


春と言ってもまだ夜は冷え込む。
いつから待っていてくれたのか、もえの頬はなんとなく冷たい。


「なぎに、なんかあったら……俺生きていけない、から」
「そんなことはないと思うけど……とりあえず帰ろ?待たせてごめん」
「んーん……帰る」


もえは不満げに私の手を取ると、何故か恋人繋ぎ。
チラッと後ろを気にした様子だったけど、何もなかったみたいにスタスタ歩き始めた。


「なぎ、前川と仲良くなったの?」
「前川って?……あ、真緒くん?」
「……んんん、やだ。なんで他の男、名前で呼ぶの?」
「…………いや、私はもえのじゃないから」
「じゃあ俺のになって!」
「うるさい……」


冷たい手でギュッと握られて、耳元がやかましい。
ありがとうの気持ち半分、早く帰ればよかったの気持ち半分。


どうやらこの八城もえぎという男は、見ないうちにだいぶやばい男に成長したらしい。


……いちいち応対が可愛いけども。
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