私の知らない恋の話。
思い出を捨てることすらままならない
「深凪ちゃん」
「ん?」
「一緒に勉強しない?」
「なんで?」
「え、だってもうすぐテストだよ?」


あー……たしかに。


「……いい、かなぁ」
「いいとは」
「やらない。テスト勉強しんどいし」
「おー……っと?」


真緒くんは、想定外、とでも言った顔で私の顔を見つめる。


「勉強嫌い」
「……本気でしないの?」
「うん」
「一夜漬けタイプ?」
「いや?勉強しない。しんどい。頑張るの嫌い」


頑張ったって、何にもならない。
特に、勉強は。
やってもやらなくても変わらないから。
授業受けてたら、だいたいわかるし、うん。


バレーとか、そういうのはやったらやった分だけ成長してるように感じるけど、勉強は、ねぇ。
才能がなかったんだろうね。
スペック運動に全振り。
運動も嫌いだけど。


「えぇ……じゃあ教えてって言ったらウザがる?」
「それは面倒。やめとこう」
「……はい」


しゅんとする真緒くん。
そんな顔されても勉強はしたくない。遠慮。


そうじゃなくても。
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