お願い、私を見つけないで 〜誰がお前を孕ませた?/何故君は僕から逃げた?〜
Side朝陽

凪波の子供の父親が、一路じゃない可能性があった。
それどころか、ここまでの経緯に俺はただただ怒りが込み上げてきた。
でも、この怒りの大元が、俺の中で迷子になった。

凪波を利用するだけ利用して、身勝手な命令を突きつけてくる事務所の社長とやらに殴り込みにもいきたい。
どうしてこうなる前に、凪波を諦めてくれなかったのかと、一路にも言いたいことは山のようにある。

凪波だってそうだ。
ここまで酷い状況だったなら、いっそ帰って来れば良かったんだ。
1人で苦しむだけ苦しんで……。


でも。
きっとそうさせたのは。
俺が凪波を救う存在だと認知されてなかったから。
そういう風にしか凪波に思われず、のんきに林檎なんかを作ってた。



もし俺が10年前、凪波にちゃんとしてれば、凪波は俺を頼ってくれたのかな。
俺は、凪波がこうなる前に助けに行けたのかな。




10年前に、戻りたい。

そんなことを考えながら次のページを見て、俺はショックでノートを地面に落とした。
赤茶色のインクのような滲んだ文字で、たくさんの「殺して」「死なせて」が書いてあったから。


鉄が錆びたような臭いに、俺は吐きそうになった。
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