お見合い相手が変態御曹司でした

 玄関には、爽やかイケメンが立っていた。柊平さんが私を見て微笑んでるけど、何故か妙に恥ずかしくなった私は「いらっしゃいませ」の挨拶すら言えなかった。

「まあ、まあ! いらっしゃいませ」
「こんにちは、突然すみません。お邪魔します」
「どうぞ、どうぞ~自分の家だと思って寛いでくださいな」

 イケメンの登場に母は上機嫌。アイス買っといてよかったわ~頂いたお菓子もあるわよね~とキッチンをパタパタと走り回っている。

 父は取引先との打ち合わせを兼ねた会食に行っていたはずだが、偶然そのホテルのロビーで居合わせたそう。

 お互い用も済んだなら、是非にと誘ったのはうちの父の方だと聞いて、私は(迷惑だったんじゃ……)と思ってしまった。うちの両親は、この良縁に完全に浮かれてしまっている。


 でも、クマの形をしたファンシーなアイスを食べている柊平さんは、とても綺麗で可愛い。やっぱり会えてうれしい。
 リビングでお茶を飲み「そろそろお(いとま)を」と言った柊平さんを、母が引き留めた。

「お夕飯、ご一緒にいかが?」

「……ありがとうございます。ではお言葉に甘えます」

 すっかり息子みたいに扱ってますけど、大丈夫かな。そんな心配をよそに、柊平さんは私の方へ向き直って言った。

「夕食までの間に、楓子ちゃんの部屋を見てみたいんだけど、いい?」
「え? ええ? 部屋? ですか?」

 何されるかわからないからいやだ! と思ったが、親公認の彼氏相手に断るのも不自然だし承諾した。両親もいるのに変なことはしないだろう、多分。

 多分……。

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