お見合い相手が変態御曹司でした
 突然、自宅に届けられた花の送り主は柊平さんで、まるで後朝(きぬぎぬ)だと思った。男の人に花を贈られるなんてことも初めてだったから私はとてもびっくりした。

 鉢植えだから一週間経った今日もまだ綺麗に咲いている。 


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「楓子ちゃん、アイス買ってきたから食べる?」

 先刻、買い物から帰宅した母が話しかけてきたので「うん、食べる」と返事をしたが、私は上の空だった。花を眺めながら、柊平さんに会いたいなあと思っていたから。

 週末は仕事と家の用事が立て込んでいて会えないから、と昨日の夜は一緒にお食事をした。
 住宅地の中にあるイタリアンレストランは、長年、西麻布でオーナーシェフをしていた方が開いたお店で、口コミで評判が広がり、常連客のリクエストでメニューが増えていったそう。

 こじんまりとした気取らない雰囲気のお店で、柊平さんが好む理由がわかる気がした。お料理もとても美味しくて、柊平さんと話すのはとても楽しかった。

 別れ際の柊平さんは、いつものように穏やかに、綺麗な顔で微笑みながら私を見ていた。否、私の足を見ていた……。



 母が「渋谷まで行って買ってきたの」と、女子高生のような事を言いながら、可愛らしい箱を開けてアイスを出してくれる。母はいつまでたっても少女のような人なので、柊平さんと私の事も「一目惚れだなんて素敵!」と勝手にラブストーリーを想像して喜んでいる。

 一見紳士ですが、あの人は私の足に一目惚れした変態なんですよ。

 再来月の結納で着る色留袖について嬉しそうに話している母に、適当に相槌を打ちながらアイスを食べていると、父が帰宅した。

 母が「おかえりなさーい!」と対応しているインターホンの画像を見ると、何故か柊平さんも一緒にいる。予想外だったので私は動揺した。

 仕事で会えないんじゃなかったの?

 特に事前の連絡もなく彼氏が家に来たら、そりゃびっくりする。

 スーツを着ていると細く見えるけど、意外に腕とか胸とか逞しくてしっかりしてるんだよね……と思い出してしまった私は、多分真っ赤になっていたと思う。
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