それでも、先生が好きでした。
第6章 ━走り出す恋心━





『―――ただ今より

第42回体育祭、開会式を

行います―――』



スピーカーを通じてグラウンドに響き渡るその言葉で

体育祭が始まった。



校長先生や、PTA会長さんなど

いろんな人が朝礼台に上がって話しをしている間


あたしは目だけをキョロキョロと動かして

必死に先生の姿を捜す。



あれから教室を出て今にいたるまで

まだ先生に会っていない。


つまり

まだ衣装を着た先生を見ていないわけで


あたしは1秒でも早く

その姿がみたくて。





…何処にいるの…??



なかなか見つからない先生に

なんだか悲しくなってきた。



衣装を着ているならば

着こなし方は違うとしても

同じTシャツとズボンを身につけているはずだから


絶対、すぐに見つかるはずなんだけど…



何処にいるんだろう。





「えりか?」



「?!」



突然、前に並んでいた沙来がくるりと向きを変えて

あたしと向き合った。



この人何してるの!?

今開会式中じゃ…



「どうしたの?

席に戻るよ??」



驚いていたあたしに

沙来が告げたその言葉。



「へっ?」



周り見てみると

みんなゾロゾロと応援席に戻っていく。



「わぁ!!

ごめん!!!」



いつの間にか開会式が終わっていたこと、

それに気付かなかった自分、


その両方にさらに驚いたあたしは

沙来に弄られながら応援席へと引き返す。






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