それでも、先生が好きでした。
「…なっちゃんは、
気を使いすぎなんだよ」
あたしと母の沈黙を破るのは
静かな先生の声。
「こんなに想ってくれる親
なかなかいない」
強い意思の篭った声。
先生の言葉に
あたしはまた、吸い寄せられる。
「どうして親にも
言わなかった?」
まるで、あたしを溶かしてしまうかのように
優しく優しく問うた先生に
こんな場面で不謹慎だと思うが
ドキっとしてしまった。
早まった鼓動を調えるように深呼吸をしてから
真っ直ぐ先生の目を見返して
あたしは言った。
「…だから、言えなかった」
「え?」
「親だから、言えなかったの」
あたしの言葉に
先生の顔が
意味が分からないと言う。
「両親がどれほど仕事が好きか
どれほど仕事を大事にしてるか
誰よりも知ってる自信がありました。
だから…「えりか」
゙あたしが我慢すればいいと思ってたんでず
そう言う予定だったのに
優しく名を呼ばれ
思わず言葉を止める。