それでも、先生が好きでした。





「…なっちゃんは、

気を使いすぎなんだよ」



あたしと母の沈黙を破るのは

静かな先生の声。



「こんなに想ってくれる親

なかなかいない」



強い意思の篭った声。


先生の言葉に

あたしはまた、吸い寄せられる。



「どうして親にも

言わなかった?」



まるで、あたしを溶かしてしまうかのように

優しく優しく問うた先生に

こんな場面で不謹慎だと思うが


ドキっとしてしまった。



早まった鼓動を調えるように深呼吸をしてから


真っ直ぐ先生の目を見返して

あたしは言った。





「…だから、言えなかった」


「え?」


「親だから、言えなかったの」



あたしの言葉に

先生の顔が

意味が分からないと言う。



「両親がどれほど仕事が好きか

どれほど仕事を大事にしてるか


誰よりも知ってる自信がありました。


だから…「えりか」




゙あたしが我慢すればいいと思ってたんでず

そう言う予定だったのに

優しく名を呼ばれ

思わず言葉を止める。






< 48 / 149 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop