となりの紀田くん



私たちに気がつかないまま
女の子と仲良く歩き出す





私はただ二人の背中を
見つめるばかりで
何も出来ずに立ちすくんでいた。





全然理解できない。





何で?




どうして?





「何してんだよお前」





「へ?」





「早く!あと追いかけるよ!」





私がボーッと立ち尽くしている
間にも紀田と瑠威は先に
行動を始めていてーーーーーー





情けないなー私。
こんなんだから鈴に
頼ってもらえないのかもしれない。





私は拳を握りしめて
二人の後を追いかけた。






ーーーーーーーーーー





…………………って




なにこれ??




ただの尾行じゃん!!





さっきから梓くんと
女の子の後をつけながら
岩陰に隠れたり草むらに
隠れたりして





様子を伺ってるだけ………





「あれ?みんなこんなところで何をしてるの?」





「鈴!?」





用事があるからと言って
帰ったはずの鈴が
私たちの後ろからやって来て






ってダメっ!!!






「鈴!来ちゃダメ!!」





「榎本、来んな!!」




梓くんたちに
きっと私たちの
声は届いてない。




だからバレることは
ないと思うんだけど





こんな現場…………
鈴が見てしまったら
絶対に傷付く





それだけは絶対にダメ!!!





なのに………………………





「ゆあ、どうし……………あ…………。」





時すでに遅し。





私たちよりも遥か
先にいる梓くんと女の子を
鈴が悲しそうに見つめる。





「鈴、いくよ!」





私はそんな空気に
いたたまれなくなって
鈴の手を引いて
梓くんたちがいる
方向とは別の方へと
一気に走り出すーーーーー





お願い鈴





そんな悲しい顔しないで。





私を頼って





一人で苦しまないで………。





「「おい、ゆあ!」」





私と鈴に追いついてきた
二人が私の名前を呼ぶ。





その声で私は
立ち止まった……





「ゆあ………私は大丈夫だから………」





「何が大丈夫なの!?」





「え?」





「あんな泣きそうな顔して、何が大丈夫なの?お願いだから一人で苦しまないで………鈴は私の大切な親友なんだから…………」





「ゆあ…………」





「頼りないし、ドジだけど…………私を頼ってよ…………私だって鈴が困ってる時は助けたい!!!」





「ふふっ………どうしてゆあが泣くの?」






鈴が優しく私の頭を撫でる。





私より小さくて
ふわふわで可愛くて
癒し系な鈴





けれど私なんかよりも
ずっと大人で冷静で
誰よりも一途で
真剣に人の事を
心配出来て……………





だからこれからは
もっと自分の心配も
してほしい…………





でも本当………………
何で、私泣いてるんだろう?





本当に泣きたいのは
鈴の方なのに。




本当、ダメだな私。





「ゆあ、ごめんね?」





「へ?」





急に謝られたことに驚き
間抜けな声が出る





「ゆあやみんなには心配かけたくないから黙ってたんだけど………ちゃんと話すね。」





そう言うと鈴は
フワッと笑って
私の手を強く握ったーーーー
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