となりの紀田くん



「紀田、ありがとね」




「なんか、ゆあが素直すぎてキモい」





「キモいゆーな!!」





夏祭りの帰り道………





紀田と二人で言い合いを
しながら歩いていると





「きゃあああああああっ」






どこからともなく
悲鳴が聞こえてきて
私と紀田は顔を見合わせ
声のした方へと駆け寄る………






そして私は
目を見開いて
息を飲んだーーーーーー






ナイフを持った女の子
その後ろには柚がいて
地面に横たわっているのは
梓くん…………?





じゃあ、悲鳴をあげたのは
その隣でしゃがみこんでる鈴?





一体どういうこと?





「お兄ちゃん………私のお兄ちゃん。もう誰にも渡さない………だから一緒に逝こう?」





そう力なく呟いて
女の子は自分に刃先を向ける。






お兄ちゃんって………………
じゃあ今、刃物を持っているのは
妹の杏里ちゃん?






女の子が刃物を振り上げた瞬間






「やめろ!杏里!」






柚が大声で叫ぶーーーーーー






柚と杏里ちゃんは
一体どんな関係なの?






「柚くんには関係ない!私の邪魔をしないで!」





「やめろ!バカっ!」






「ダメっーーーーーーーーっ………」






ブスッ






勢いよく突き刺さる刃物。







誰に?







私に………………?






あ、止めようと思って
飛びついた時
自分に刺さっちゃったのか。





私、死ぬの?





嫌だな………






柚…………いつも
わがままばっか言って
ごめんね?






紀田……………最後まで
名前呼び出来なくてごめん





鈴…………泣かないで。
梓くんはきっと大丈夫だから。





杏里ちゃん…………
貴女は要さんと一緒だね。
歪んだ愛の形が
こんな惨劇を生み出すんだ。






「「ゆあ!!」」





「姉貴!?」






もう少しみんなと一緒に
いたかったーーーーーー






薄れゆく意識の中
最後に見えたのは
歪んだ紀田の顔だったーーーーーー
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