捨てられママでしたが、天才外科医に独占欲全開で溺愛されています

トントン…

「待ってたよ！」

「真帆〜…」

「千佳、ひとまずともくんを寝かせよう。」

「ごめん、智也は公園で遊んだから汚いの…。バスタオル貸してくれる？下にひいて。」

「そんなのいいよ。気にしないから早く。」

智也を真帆のベッドに寝かさせてもらった。


「真帆…昌也がうちに来てたの。私がいないと思ったのか玄関の前に座り込んでたの。」

「え？！」

「どうしてだろう…。どうして？」

「それは…千佳と話したいからじゃない？」

「いまさら？」

「それは分からないけど。でも話したいから待つつもりで玄関にいるんでしょ？」

「私はもう話したくない。昌也に失望したくない。」

「でも昌也くんは話したいから来てるんだよね。」

「多分。」

「ねぇ、あんなに好きだったのにそんなひどい別れ方する？待っててって言われたんだよね？」

「あの時は…。待っててって言われた。私も待ってるって。でもアメリカに着いた連絡しか来なかった。いくら連絡しても返事は来なかった。電話も繋がらなかった…使われてもいなかった。これが現実。全てじゃない？」

「うん…。」

「何か理由があったの？その理由って何？2年間、何も連絡なかったよ。何か理由があるにしても何もないってことはないよね。」

「そうだね。」

「今さらうちに来る理由がわからない。」

「千佳…」

「ねぇ、真帆。もう私、傷つきたくない。」

「傷つくとは限らないじゃない。わざわざ傷つけに来る訳ないよ。きっと千佳と話したいことがあるはずよ。」

「…」

「千佳が、あの時どれほど傷ついたのかは私が一番知ってるよ。ともくんを妊娠した時、心細かったのに連絡がつかなくなって落胆してたのも分かってる。つわりで辛くても1人で頑張ってた。子育ても1人で頑張ってるよ。でもさ、それって昌也くんの子供だから産みたかったんだよね？育てたいんだよね？」

「うん…昌也の子供、嬉しかったの。だから昌也がいなくなっても下ろすとは考えたこともなかった。ただ、昌也の子供を産めることが嬉しかったの。今でも授けてくれたことに感謝さえしてる。」

「そうだよね。だったら…。」

「昌也の事、本当に好きだった。でもそれは過去形…。昌也の子供の智也は大切。でも昌也のことはもう終わった事なの。」

「それでいいのかな？」

「いい。これで揺らがないって決めたから産んだの。昌也の子ではなく私の子として産んだの。」

「千佳が決めたことだからもう言わない。ひとまず今日はうちにこのまま泊まりなよ。ともくんの物買いに行く？」

「大丈夫。智也は公園行く時に着替え持ち歩いてたから。私だけ真帆の服貸して。」

「いいよ。なんだか懐かしいね。独身の時はよく来てたのにともくん産んでからはきてなかったもんね。」

「そうだね。散らかしたらごめんね。」

「なにいってるのよ。そんなこと気にしないよ！」

「ありがとう。」

「さ、久しぶりにゆっくりしてって。私が起きたらともくんと遊ぶから…。」

「智也、元気いっぱいだから真帆バテちゃうよ。」

真帆にはああ言ったけど…やっぱり心のどこかでは昌也のことが気になって仕方なかった。

でもまた音信不通になるのも怖い。