東京血風録4 ダークサイド・イリュージョン
ダークサイド・イリュージョン

堕ちた魂

伽藍学園校門。1人の男が到着した。
学園へ続く坂を登って来たのだった。
その男は、坂の下男達が戦っている所を通り抜けて来たのだ。
その時、藤堂飛鳥にバックドロップを仕掛けていた無敵丸甲児の膝裏を蹴って、未遂に終わらせていた男である。
校門を過ぎるとすぐ様、回りを見渡して誰かを探している。

校庭内に5人の男女がいた。
雷撃掌のカミラ・シルバーストーン。
無敵丸家の無敵丸剛太。
黒ずくめの謎の男。
鬼の王・摂津秋房。
そして、王道家剣士・王道遥。
である。

「遥君」
坂を登って来た男は、王道遥に声を掛けた。走って来たのに、息も上がっていない。呼び方が友人のそれだった。
遥は振り向いて、声の主を視認。
認証完了。
その男は、姉・王道霧華の彼氏であった。たしか、富山だか石川だかの出身で彼もまた“視える”体質だった。
武術家の嫡男で、相当の実力者ながら、その武術は家では発揮されず、除霊をする為に活かされた。自身で起業しており、その道を探していた霧華と知り合ったのだ。
即ち、霧華と遥の店舗であるオカルトOHDOHの立ち上げにも携わっている人物である。
彼氏だと紹介された時と、店舗の立ち上げの時に何回か顔を合わせていた。
そこまで認識をダウンロードさせて、顔と名前が一致した。
「三島木さん」
と遥は呼んだ。
三島木と呼ばれた男は真顔である。
王道霧華の彼氏、三島木怜一到着。

補足である。
何回か会ってはいるが、遥は怜一の事をよく知らなかった。
元々、人付き合いも得意ではなかったし(剣と話し込むような少年だった)女性と付き合った事もなかったので、彼氏彼女の存在があまり理解できず、姉の彼氏という存在とどう接していいか分からずに、話も相槌程度の具合だった。

三島木怜一は稀代の天才肌であり、三島木流合気柔術5代の中で、最高傑作と呼ばれる逸材であった。
その特長が、空間支配である。
自身の身体の周り、視認と空気の流れに依り、相手との空間をミリ単位で掌握できた。突きや蹴りが当たらないばかりかふいのフェイントですら、読み取られ空を切った。
空振りその空に残った腕や脚に、合気の技である梃子の原理を利用して、ほんの少し力を加えただけで相手はもんどりうって地面に叩きつけられた。
それはもう、面白いようにくるくる回されたものだ。
最強がそこに居た。

三島木怜一が言う。
「時間がない。単刀直入に言おう。驚くなとは言わない。覚悟はしてくれ。霧華さんが亡くなった」











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