お前さえいなければ
その様子を両親とエンジは止めることができず、ただ見つめている。目の前で大切な娘、婚約者が殺されているというのに、声を上げることもせずに見つめている。アヤメは心の中で嗤った。

「け、警察だ!!今すぐハサミを捨てなさい!!」

警察官が銃を向け、アヤメはようやくピタリとその動きを止める。そしてゆっくりと警察官の方を見た。その目は憎しみや怒りが込められたものではなく、悲しみに揺れている。

「……私は、ミヤコに全てを奪われてきた。両親の愛情も、婚約者も、才能も、人望も、何もかも。好きでこんな風になったわけじゃないのに。でも、裁かれるのは私なんだ」

その言葉に、警察官は何も言えなくなってしまう。アヤメはもう一度ミヤコを見た。もうミヤコは死んでいる。アヤメがミヤコの幸せになるはずだった未来を奪ったのだ。

「あっはははははははははははは!!」

全身が血で汚れ、醜く顔が歪んでしまったミヤコを見てアヤメは笑う。悲しみは感じているものの、後悔はない。

夕暮れの屋敷に、アヤメの笑い声だけが響いた。
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