お前さえいなければ
『何の取り柄もないお前など、血のつながっていない他人の子だと言えたらいいんだが……』

『あなたは何もできないのだから、せめていい家に嫁いでちょうだい。この家はミヤコの旦那に継がせるわ』

過去に両親に言われた言葉が頭をよぎる。アヤメは泣きたくなるのをグッと堪え、自室へと走った。

自室に入るとすぐ、アヤメは便箋を取り出す。ある人に手紙を書くためだ。

「エンジさん、あなたに会いたい……」

こんな自分を受け入れてくれて、慰めてくれる年上の男性であるエンジとは、アヤメの婚約者である。








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