√セッテン
身体を押さえ込んでいた金縛りから解放されて天井を見た。


「うっ……あ」


声を上げそうになって、自分の手で口を押さえた。

そこには、長谷川沙織と同じ姿をした女がいた。

そう

照明からのびるコードにシャツを結びつけ

その先で円を象り、そこに首を挟み込み締め付けた姿。


目からは涙と、混じるように赤い血

動かないと思ったその女の視線が、ほぼ真下の俺に、突然向いた。


『私 死ぬの……』


当たり前だ

首つってるんだぞ お前


『だけど』


女の2つの目

大きなガラスのような瞳

極限まで下に視線を投げてくる女の目は、白目しかない。


『だけどお前も……』


ブツンと、照明のコードが切れる音がする。


落ちてきた女が、俺の前にグシャリとおかしな音を立てて着地する。

広がる黒い髪

女の手が俺に伸びる。


"ゴキン"


突然あの音を思い出した。

森先輩が閉じこもったあの部屋からしてきた

肉と骨を断つあの音。
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