√セッテン
「そんな訳ないじゃん、行きなよ潤!」

「敦子……?」

派手にヒトのクラスに乗り込んできて

いきなり何を言い出すかと思えば

「昨日告ったんだったら、山岸さん、まだ潤のこと好きなままで逝っちゃったってことだよ?せめて見送るぐらいしてあげなよっ」

「飯島さん……」

山岡は敦子に感謝の瞳を向けて頷いた。

山岡より、敦子の瞳が怖かった。

「分った、分かったよ。女子2人がそう言うなら間違いないってことだよな」

お前なんかに見送られたくない

山岸絵里子がそう思っている可能性だってあるだろうに

「ありがと……黒沢君」

「突然なことだけど……千恵ちゃんは大丈夫?」

「飯島さん、ありがとう」

山岡は、やっと止まった涙を、またハンカチににじませて敦子の言葉に答えた。

同い年の人間が死ぬなんて、初めてのことで実感が湧かない。

昨日まで教室にいた山岸絵里子。

ただ、風邪でもひいて欠席しているだけのような

そんな錯覚の中にいた。

担任に事情を話すと、今日1日くらいは山岸の彼氏になったつもりで見送ってやれ

なんてムチャクチャ言って俺たちを送り出した。
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