√セッテン
「でもこれで、潤が一番見たくなかった答えが見れるわね。千恵も、敦子も、私の待ち受けで死ぬ」

あは、あは、と途切れるように高く√の女は笑うと

目を細めて俺を覗き込んだ。

「2人が死んだら、どうする? 夢の続きはどうしてた? 潤もあとを追う? それとも私が潤のところに来て遊んであげた?」

俺は何も言わずに、√の女を睨んだ。

どす黒く病んだ気配が、あたり一面に香りを放っているようだった。

「私は敦子が嫌いだから、森先輩と同じように、グシャグシャにしてあげる。潤が心配で心配でしょうがないなんて、かわいいのね敦子って」

「敦子が電話してきたのは、俺を気遣ってだけじゃない」

「敦子が大切なのは、潤だけだよ」

スピーカーから、まだ敦子の声が聞こえたが、√の女は通話を終了させてケータイを片手に、俺の頬に触れた。

「女は友達なんかより、男を選ぶの」

それは、池谷美保のことを言っているのだろうか

冷たい手は頬から滑って落ちた。

目を細めた俺に、√の女は笑った。

「だから、別に敦子を責めたりしない。だけど、私だってもう相手を思って遠慮なんてしない」

√の女の顔が近づいて、冷たい唇が重なる。

「すぐ、潤の中にいくから……ちょっとだけ待ってて?」

「潤!」

切り裂くような声がして、屋上の入り口を見た。

大きく肩で息をする敦子と、一足遅れて霧島悠太の姿が見えた。

敦子は一足飛びでこちらへ走り込んでくる。

霧島悠太の視線は、山岡から離れない。

「山岡!! 花火大会、行くんだよな」

拘束された腕に力を込めながら、山岡へ声をかけた。

「行くって、約束したはずだ。俺のことを、最後まで信じてくれるって言ったはずだ!」

息を飲んで、早口で続ける。
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