√セッテン
「アドレス帳。一見女かと思いきや、実は男」

韻を踏んで返すが、敦子はむぅ、と嫌そうな顔を俺に投げつけてきた。

死んだ奴をあれこれ言うのはよくないけど、女って生き物は、本当に未知数だよ。

「ムーントピックで死んだ池谷と吉沢のケータイが手に入らないと、森先輩や渋谷景と同じ時系列の他の被害者が誰なのか分からないな。リミットは、今週中に来るはずだ」

「そうなんだよね。1人のケータイで発信と着信、両方に増えるってことは……ネズミ講だよね」

「早くストップさせないと広がりまくるってことだ」

死の待ち受けの転移が、アドレス帳からのランダムなら……

たとえばFAXとか、お客様相談センターとか

そういう人とは関係ない所、つまりケータイとは関係ない所に飛ぶ可能性も高いけど

発信と着信は、人からかかってきてる可能性が高い。

しかも最新の発信と着信で飛び火するってことは

明らかに『生きてる』番号に飛ぶ確率が高くなるってこと。

長谷川沙織の最後の発信が死んだ甘川充で、その前が家だった今回の場合。

一体待ち受けはどうなるかは分らないが、とりあえず死人に飛ぶならこれ以上被害もないし、家なら待ち受けの表示のしようがないだろう。

「自分からかける電話も、受ける電話も、どっちも大切だもんな……」

敦子は急に青ざめた顔をして、手にしていた紅茶のポットを机に置いた。

「……私、もう誰からも電話受けられないし、かけたくない」

「とりあえず長谷川は、最後の発信が甘川先輩ってことだな?着信は……」

「着信は千恵ちゃん。ほら、家に行くときに電話したでしょ?」

あぁ、そうだ。

その時、俺たちもいた。

最後、長谷川沙織は部屋で暴れていたようだったけど、あの時にかけていたとすれば彼女は発狂でもしたとしか思えない。

死者にコールし、首を吊った。

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