√セッテン
「山岡」

「何? 潤君」

「俺、コンビニ寄ってくから、先行ってて」

女子が複数いる場所に混じるのは、精神的に疲れる。

昨日も敦子にガンガン言われたしな。

女は複数集まると、ロクでもない話題を持ち出してくる

1人だけでも扱いが大変だっていうのに、複数は本当に遠慮したい。

ケータイを覗いて時間を見る。

電車に乗り込む前に表示していた、タナトスの館が出ていた。

俺はクリアボタンを連打していつもの待ち受けに戻すと

オレンジジュースを買いに涼しいコンビニへと入った。


学校につくと、いつもならすでに頭数の揃っているはずのクラスは、がらんがらんだった。

あれだけ電車が遅延していたら、当たり前かもしれない。

河田が俺をみつけて、さっそく話を振ってきた。

「で?なんかヤベーじゃん、ちゃんと俺にも話してくれんだろうな」

俺は昼飯用のサンドウィッチをカバンの横にかけて、オレンジジュースのキャップを捻る。

「死の待ち受けを持ってた奴が、15日のリミット過ぎる直前に発信、着信した最後の相手に、伝染する。要するに最後に連絡をとった2人に広まるってことだ」

オレンジジュースはいつものメーカーと違ったので

少し酸っぱい。

「回避する方法は、いまのとこない。表示されたら終わりだ」

俺は言ってタン、とオレンジジュースを机に置いた。

「マジバナだったわけ……それで今誰が待ち受け持ってんの?そいつに電話しなきゃいいんだよな」

「河田が発信しなくても、相手が掛けてきたら意味ないだろ。相手の意思まで操作できるのか?」

「う、そうだよな……俺ヒマだと思われてるからな、絶対みんなかけてくるに違いない」

「しかもその法則が分ったのは昨日。だからそういう法則を知らない奴は……」

「ヤベ、もー急いで電源切るわ俺」

河田は自慢の最新デザインケータイを取り出すと、電源をOFFにした。

「……そう、知らない奴は、どうする……」

「は?どした?」
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