雨のスキキライ
「きっと、涼花さんにはわからないんじゃないかな」


その通りだけど、実際に言われると本当に腹立たしい。


「でもね、最近はあんまり好きじゃないんだ」


透真は窓の外を見て、寂しそうに呟いた。


「どうして?」


意図せず私の言い方は嬉しそうだった。

透真と考え方が一緒になって、嬉しいのかもしれない。


透真は私を見て、自分の人差指を唇に当てた。


「ヒミツ」


これもまた腹立つ。


「言え」


その鬱憤を晴らすように、透真の肩を殴る。
そんなに力は入れていないけど、透真はわざとらしく痛がった。


「なんで雨が好きじゃなくなったの」


改めて聞いても、透真は目を逸らすばかりで答えてくれない。


「……もういい」


私は踵を返して教室に入る。

もう誰もいなくて、室内には雨音が響いている。


やっぱり雨の音は嫌いで、逃げるようにカバンを持って教室を出る。

その流れるような動きの間に透真に呼ばれたような気がしたけど、知らない。


私はまっすぐ昇降口に向かう。


「涼花さん」


階段を降りる途中で透真に腕を掴まれた。


「帰るなら一緒に帰ろう」
「やだ」


腕を振り払って階段を降りていくけど、昇降口に着いて私の足は止まった。

雨の中を歩いて行く気力がなかった。


「一緒に帰ろう?」


透真がそっと手を差し出してきた。
< 2 / 4 >

この作品をシェア

pagetop