助けてください!エリート年下上司が、地味な私への溺愛を隠してくれません
「あの……私なんで、壁ドンされてるんですか?」
「ほら、やってみなよ、体で僕を誘惑するんだよね?」
「はあ!?誘惑!?」
「取引先を陥落させた技、僕にやってみなよ」
「技って、電話かけまくっただけですけど……」
「……」
「……」

無言が続く。

「……あの?いい加減離れてくれませんか?」

まだ近い。

「あのリストだけど……」

何?このまましゃべる気?

「他の営業がどんなに口説き落としてもダメだった、超難易度高い企業ばかりだったんだけど」
「……」
「……」
「……はあ!?」
「うるさい!大きな声出さないでよ」
「だったら離れればいいでしょ!」

私はどんっとクソ上司を押して、どうにか壁ドン状態から逃れた。

「……ま、成功させたんなら良いや」
「よくない!ちっともよくない!」
「何が」
「今の壁ドンはなんだったんですか!」
「はい、ご褒美」
「だから聞いてます?人の質問に答えてください!」

クソ上司はポケットから硬貨を取り出し、私の手のひらに転がす。

「これで好きなもの飲みなよ」
「あ、ありがとうございます……」

ん?

「私のお金で加藤さんコーヒー買ったじゃないですか!これはご褒美じゃなくて、当然の権利ですから」
「え?僕に奢って欲しいの?」
「口だけ上司って言われたいんですか?」
「わかった、じゃあ今度飯、行くぞ」
「…………え?」
「あ、外出は承認しとくから、詳細だけ後でメール頂戴」

矢継ぎ早に言いたい事だけ言ったクソ上司は、最後にとんでもないセリフを吐いていきやがった。

「僕の時間をあげた分、対価は支払ってよね。お姉さん?」

嵐のような時間だったけれど。
私は、何かを聞き逃した気がするけれど。
ひとまず。

「やーっと解放されたー……やっぱり糖分たっぷりの飲みもの買おう……」

と思って手のひらを見ると……

「に……20円……?」

私はその20円を床にたたきつけたくなった。
が、お金を粗末にするのはよくないと教わったので、代わりに足で地面を踏みつけてやった。

「覚えてろよー!!!!!クソ上司ー!!!!!!!!!」


Winner 加藤涼介
Fight2へ続く……
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