君と旅の途中
「あぁ、ありがとうございます……っなんていうと思ったか! 今人ひとりが死にそうになったんだよ⁉ これを殺人未遂事件と言わずになんという!」
「お、おう」
ものすごい勢いでまくしたてられて、一瞬引きつつも顔をしかめた。
「は? 俺がいつお前を殺そうとしたんだよ?」
「今! 都生が変なこと言ったから!」
「変なこと?」
「か、彼氏様……とか、急に言われたら心臓が破裂するやろわれぇ!」
かああっと噴火直前のような顔色でまくしたてられて、ふと笑ってしまう。
「何笑っとんねん!」
「いや……照れてる俺の幼馴染はかわいいなと思って」
ぎろりと睨まれて素直に答えると、穂希はポカンと口を開いた後、どすっと横腹を殴ってきた。
「おぬし……さては我を馬鹿にしているな?」
「え、心外」
低い声ですごまれて、俺は横腹を押さえたまま微かにショックを受ける。
まぁ、半分はからかい目的だったのは事実だけど、半分は本気だったのに。
悲しいかな。誤解をされてしまった。