薄氷
自分を送って帰った日は時間を取られるのに、帰宅後に机に向かったりするんだろうか。

見せて、と洸暉は言った。
「俺の家で」

習っている教師が違えば、受けているカリキュラムも違うわけで、いくら特進クラスでもいきなり問題を見て分かるのか、結局のところ離れに連れこむ方便ではないか。
習い性になってきた疑念をぶくぶくと泡のように湧かせながら、しぶしぶ自転車の荷台にまたがった。

その数十分後には、迷いなくノートにペンを走らせる彼の手元を、驚嘆とともに見つめていた。

ローテーブルに角をはさんで座り、問題集の当てられている設問を示したのと、洸暉がペンをとったのがほぼ同時だった。

解答を書き写しているのかと錯覚するような、いや視線を横に動かしたりしないぶん更に早い。
解答はあるのだ、彼の頭の中に。それをノートに書き写している。

ぽいと、つまらなそうにノートにペンを放ってみせる。正直その数式が合っているのかすら、陽澄には判断できない。正解なのだろう、たぶん。
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