きらめく星と沈黙の月
だから怖いんだ。


「怖いはずがないのになぁ…なんでなんだろうね…」


怖くない、と頭では分かってる。


分かってるのに、怖い。


「まぁまぁ…。仕方ないよ。桜にとっては星矢に裏切られた形になっちゃったんだしさ。間接的に野球がトラウマになったって不思議じゃないよ」


陽菜がそっと背中を撫でてくれた。


生ぬるい風が二人の間を吹き抜ける。


「ね、桜。旧校舎の鍵が壊れてて中に入れるの知ってる?」


サンドイッチを頬張りながら、唐突に陽菜が言った。


「知らない。そうなの?」


「うん。蒼士が教えてくれた。でね、旧校舎の屋上に出たらグラウンドが綺麗に見渡せるの」


新校舎からじゃ旧校舎が邪魔でグラウンドは見えない。


「旧校舎だから人もいないし、練習風景を見るには最適だと思うんだけど、どう?」


…なるほどね……。


旧校舎の屋上なら、碧に気づかれることもないし…。


たしかにいい場所だとは思うけど。


「…そんなことしていいの?立入禁止でしょ?」


昔から先生に怒られるのが極端に苦手だから、なるべく怒られそうなことはしたくない。
< 157 / 586 >

この作品をシェア

pagetop