きらめく星と沈黙の月
「桜子」


旧校舎屋上っていう分かりやすい場所にいたのが間違いなのかもしれない。


この柵の向こう側に見えるグラウンドが好きで、ついここに来てしまう。


「……陽菜から聞いたんでしょ」


「…本当にごめん。傷つけてばかりで本当にごめん」


気配で碧が頭を下げたのが分かった。


「謝ったからって、桜子の心の傷が癒えるわけじゃないのは分かってる。だけど…ホントに悪かった。ごめん」


碧は…本当に全部知っちゃったんだな……。


昨日まであんなに怒ってたのに…。


「ごめんな…桜子…。それと…ありがとう」


……!!


“ありがとう”


碧の口からそれが聞けるなんて思わなかった。


予想外の言葉に思わず振り返ると、碧はまだ頭を下げていた。


「…もういいよ、碧。私は大丈夫だから」
< 548 / 586 >

この作品をシェア

pagetop