きらめく星と沈黙の月
報道では、まるで伝説の男のように称され、“藤北の碧”から“全国の碧”になってしまった。


星矢碧の知名度はうんと上がり、野球好きなら誰もが知っている名前となった。


私はそのことの方が寂しかったりする。


「無名の公立高校を優勝に導いた気持ちってどんな感じなの?」


「ははっ。別に俺が導いたんじゃねーよ。皆が足並み揃えて突っ走った結果だ」


嬉しそうにはにかむ碧。


キラキラしていて爽やかな笑顔は引退後も健在だ。


「それとさ、前から聞きたかったんだけど、予選の決勝の日、エラーしたショートに何て声かけたの?」


「あー…なんて言ったっけな…」


あの時、碧の言葉で皆が笑顔になっていた。


いったい何を言ったのかずっと気になっていた。


「たぶん、“勝てばいい話なんだから落ち込むな”“この回抑えて、次で俺が打つから”って言った気がする」
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