周王 龍巳を怒らせるな
龍巳が事務所を出た後、厘は一人……煙草を吸いながら思いにふけっていた。

【好きなんだ……穂ちゃんのこと…本気で………】

「“あの”周王 龍巳にあんな顔ができるなんてな……」

キレた時の龍巳は、まさに悪魔だ。
何の躊躇もなく、相手の身体を引き裂く。

一度、なぜこんな残忍なことができるのかを聞いたことがある、厘。
【だって、それが一番の痛みだと思わない?】
と微笑みながら言っていた。

そんな龍巳が、穂華を想い苦しそうに顔を歪ませていた。

「長月 穂華。
可哀想な女だ。
きっともう……キングからは…周王 龍巳から逃げられない……」

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
マンションに帰りつき、玄関を開ける龍巳。
タタタタ……と駆けてくる音が聞こえてくる。

「たっちゃん!!」
「え━━━?
穂ちゃん…!?」
「よかったぁ…どこ行ってたの?
電話出てくれないし……」
「ごめんね!急に仕事のことで、行かなきゃいけなくなって……」
「そっか…こんな時間まで、お疲れ様」

ソファにいつものように並んで座る、二人。
「穂ちゃん…泣いてたの?
ここ……涙の後…?」
穂華の目元を拭いながら、話しかける龍巳。

「あ、いや…電話繋がらなくて、不安になっちゃって……私、たっちゃんに振られるのかもって考えてたから……」
「え?どうして、僕が穂ちゃんを振るの?」
「だって!前も!
俊くんも…突然……」
話がながら、また涙が伝う穂華。

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