好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~
「こうやって車に乗せるのは久しぶりだな」
まっすぐに前を見ながらおじさんが聞いてきた。

確かに、いつぶりだろうか。
学生時代の塾の迎えはいつもおじさんだったから、十年ぶりくらいかな。
当時も相当忙しかったはずなのに、塾にはいつもおじさんが迎えに来てくれていたっけ。

「俺のために、随分無理をしていたんですよね」
ぼそりと口を出た。

「まあな、子供のことだし。俺が父親だしな」

社会に出て働くようになったからわかる。
おじさんは俺のために色々としてくれていた。
当時は当たり前としか思っていなかったけれど、息子だと思えばこそできた行動だ。

「子供を見つけたらちゃんと話を聞いてやれよ」
「おじさんがしたように?」
「俺は・・・いい親父ではなかった」

そんなことありませんよと言いかけて言えなかった。
きっと悪いのは不出来な息子である俺の方。
もう少し素直でかわいげのある子だったら、違っていたと思う。

「・・・すみません」
「馬鹿」

俺はおじさんのように大地の父親になれるだろうか?
今はまだ自信がない。
でも、やるしかないんだ。
< 108 / 176 >

この作品をシェア

pagetop