好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~
「お前、そんなに自信がないのか?」
「そんな訳ッ」
「じゃあいいじゃないか。そもそも川田さんはうちの社員なんだから、話をしようと思えば俺はいつでもできるぞ」
「それはそうだけれど」

おじさんのこういうところが苦手だ。
どんなに頑張っても、今だに口ではおじさんにかなわない。
だからこそ上場企業の社長なんて務まるんだろうけれど、親父の時はその顔を出してほしくない。

「安心しろ、余計なことは言わない」
「本当に?」
「ああ。それに、川田さんのことだってお前が出会うよりずっと前から知っているんだからな」
「そうでしたね」

大地が生まれる前後の2年間を遥の家で過ごしていた礼。
そのころの俺は平石の家に行くこともなかったから会う機会はなかったが、おじさんは何度も会っていたらしい。
そう思うと、少し悔しいな。

「子供が生まれた時も、喜んだ賢介から写真を見せられてよく覚えてる。まだ首が据わらない時期に抱いたこともあるぞ」
「そうですか」
それはよかったですね。クソッ。

「まあ、そんなに怒るな。息子の彼女に横槍を入れるほど俺も暇じゃない」
おじさんはすごく楽しそうに笑っている。
< 107 / 176 >

この作品をシェア

pagetop