好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~
「小川が大金持ちの一人娘で家を継がないといけない立場にいたとしたら、お前はすべてを捨てて小川について行けるか?」
「そんなの、」
無理に決まっているじゃないか。

「できないよな」
「ああ」

俺にだって守らなくてはいけない家や会社がある。
育ててもらった恩を返すためにも放り出すことはできない。

「でも、それは矛盾した話だな」
「何が」
「だってそうだろう。お前が平石を継ぐために小川がついて行くのは当然で、もしも小川に継ぐべき家があってもお前はついて行かない。それっておかしいじゃないか」
「それは・・・」

確かに矛盾しているし、傲慢な考え方だと思う。
でも、納得して俺について・・・え、待て。

「もしかして、桜の宮家の後継問題に萌夏がかかわっているってことか?」

まさか、そんな馬鹿な。
二十年以上絶縁状態だった萌夏を、今更どうしようって言うんだ。

「詳しいことはわからない。ただ、今の当主は娘婿で妻だった桜ノ宮葉月さんも数年前に亡くなっていて、2人には子供もいなかった」
「それって」
「今、桜の宮家の直系は小川だけだ」
「そんな・・・」

俺だってなんとなく気づいていた。
宮家の事情はなかなか情報として入ってこないが、直系の後継者がいないことは調べればわかった。
萌夏が皐月さんの娘であれば当然桜の宮家の血を引く人間てことになる。

「お前は、どうする?」
雪丸の挑んでくるような視線が痛い。

さあどうするかな。
俺は萌夏をあきらめることができるのか?いや無理だ。
萌夏は俺にとって唯一無二だ。
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