好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~
「そんな理不尽な話があるか」

二十年以上前に捨てた娘とその子供を今更取り戻そうなんて誰が見てもおかしいだろう。
少なくとも俺は絶対に納得しない。

「じゃあ、小川自身がそれを望んだら?」
「はあぁ?そんな馬鹿なこと」
ある訳ないじゃないか。

「何でそう言える?」
雪丸の意地悪い顔。
「それは、」

俺も萌夏も一緒にいたいと望んだ。だからこそ平石の家で同居をしている。
将来のことだって、数年後には結婚しようと話している。
萌夏が俺から離れたいと思うはずはないんだ。

「じゃあ聞くが」
「何だよ」

持っていた書類を応接テーブルの上に置き、腕を組んだ雪丸がじっと俺を見据えた。
こうやって凄みを聞かせるときの雪丸は、やはり迫力がある。
十代の頃喧嘩で負けたことがないと豪語していたことを思い出すな。

「お前は平石を継ぐんだよな?」
「ああ」
平石本家の長男だからな。

「お前と一緒になれば、小川は平石の奥様になるわけだ」
「そう、なるな」

萌夏はそのことを嫌だと言ったこともないし、家でも楽しそうに過ごしている。
問題があるようには見えない。

「もし逆の立場なら、お前はどうする?」
「逆?」
言われている意味が分からず、聞き返した。

「だから、」
困ったなあと、雪丸は近くの椅子に腰を下ろした。
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