好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~
約束の時間まであと少し。
久しぶりに遥と会えるのがいれしい気持ちと、こんな形でしか会えなくなってしまったことに遥がどう反応する不安な気持ちで、私はドキドキしていた。

外面がよくて人前で怒ったりしない遥も私の前ではわりとストレートに感情表現するし、最近は仕事の忙しさもあって機嫌が悪かったから、もしかして怒られるのかなって思ったりもする。
実際これが逆の立場なら、私だって文句の一つも言いたいはず。

トントン。
ノックの音が聞こえ、
「はい」
私は返事をした。

「お連れ様がお見えです」

先ほどの支配人がドアを開け、続いて、

はるか・・・
その人を見た瞬間、私は駆け出した。

ドンッ。
音にすればそんな感じ。
体と体がぶつかるように、私は遥に抱きついた。

「おい、萌夏。落ち着け」
まだ数歩後ろには支配人がいるのが見えて遥が止めてくれるけれど、私の歯止めは効かなくなっていた。

約ひと月ぶりに会う愛しい人。
自分の意志とは関係なくいきなり会えなくなって、寂しくて恋しかった。
この温もりをどれだけ求めていたことか・・・

「とにかく部屋に入ろう」

支配人には遥が上手に目配せしてくれたらしく、いつの間にか廊下から消えていた。
私は遥から離れたくなくて、手を回したままでいた。
動く気配のない私を、遥がそっと抱き上げる。

「えっ」
さすがに恥ずかしい。

「このまま廊下で抱き合っているつもりか?」
「それは・・・」

遥に抱えられ、私は客室のソファーへと運ばれた。
< 125 / 176 >

この作品をシェア

pagetop