好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~
それから15分ほど。
私は高層階の窓から都会の景色を眺めていた。

たった二年前、初めて遥のマンションに行った時に見た景色に感動したっけ。
それまで貧乏アパートで暮らしていたから、こんな世界があるんだなあとちょっとしたカルチャーショックを受けた。
お金持ちすぎる遥との暮らしは幸せだったけれど、いつもどこかに引け目のようなものがあった。
平石財閥を担っていく遥に私は何の力にもなれなくて、守られているだけの自分が辛いと感じることもある。
私は遥にふさわしくないんじゃないか。それは、心のどこかにいつも感じていた不安。

トントン。
ノックとともにドアを開けた見るからにホテルマン風の男性。

「失礼いたします。当ホテルの支配人でございます」
そう言って頭を下げた男性に、私は笑顔を向ける。

「本日はお世話になります」
軽く会釈をすると、男性の頭がさらに深く下げられた。

今日はおじいさまがこのホテルに予約の連絡をしてくださった。
当然桜の宮家と名乗っているはずだし、SPを連れて来店すれば周囲にだってただならぬ雰囲気は伝わっているはず。
ここは桜の宮家の人間として振る舞うしかない。

桜の宮家に来てから外出が初めてってことはないけれど、おじいさまともおじさまとも一緒でない一人での外出は初めてで私は緊張していた。
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