好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~
先代当主の奥様であるおばあさまがなくなって、喪主として忙しいはずの創士さんがなぜ俺にこんな話をするのかがわからない。
創士さんの口ぶりや表情からは俺に話したいんだという気持ちがヒシヒシと伝わってくる。
でも、その意図が分からない。

「その彼女が、ここで亡くなったんだ」
「えっ?」

なんだか急に背筋がゾクゾクした。
何かが繋がるような予感が・・・

「彼女が亡くなった時僕はアルコール依存症治療のための病院に入っていて、彼女の死を知ったのは大分後になってからだった」
「それって・・・」

「彼女が命と引き換えに子供を産んだと聞いたのは妻と結婚して桜ノ宮に入った後だった」
「それじゃああなたが」
俺の父親ですか?
そう言いかけて、怖くて聞けなかった。

「正直、当時の記憶は曖昧なんだ。何度か関係があったのは事実だが、ほぼアルコール中毒のような状態ではっきりしたことは覚えていない。すまない」
申し訳なさそうに、創士さんはうなだれた。

酷い話だと思う。
あまりにも無責任で、腹立たしいとさえ感じる。
親としての責任が果たせないのに、何で子どもなんか作るんだよ。無責任に生むんじゃない。
そう叫びそうになった。

「何で、今更言うんだよっ」
立場もわきまえず強い言葉を投げつけた。

「すまない」
創士さんが深く頭を下げた。
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