好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~
「今日俺に話したのは、告白してすっきりするためですか?」
俺にしては珍しく冷たい言葉になった。

「まさか、そこまでバカじゃない」
「じゃあなぜ?」
黙っていれば済むことをなぜ今言うんだよ。

真っすぐ睨むように見る俺に、創士さんは困ったような表情をした。

「このひと月、萌夏さんにはずっとお母さんの側にいてもらった。おかげでお母さんは安らかに旅立つことができたんだ」
「そうですか」
それはよかった。

「まだお父さんもいらっしゃるからこのまま桜ノ宮に残ってもらいたい気持ちもあるんだが、それではあんまり虫がいいと思ってね」
「それじゃあ」
「僕の養女として、桜ノ宮の人間として、平石に嫁がせたいと思うんだがどうだろう?」
「そんなこと、できるんですか?」
「もちろん。だてに当主をしているわけじゃない」

もしそれが可能なら、俺と萌夏は一緒に暮らせる。
桜ノ宮の人間として認められればおじいさまにだっていつでも会えるわけだし、すべての問題が解決するように思う。

「ただし、その場合僕が君の義父になるわけだが、いいのかい?」

ああ、なるほど。
だから創士さんはわざわざ話をしたんだ。

「すぐには無理でしょうが、いつかお義父さんと呼べるように努力します」

「ありがとう」
「こちらこそ、ありがとうございます」

色々と思いはある。
不安だってないわけじゃないが、今は萌夏との未来だけを考えよう。
複雑な気持ちのまま、俺は創士さんを見つめた。
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