好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~
みんなで必死に麗を説得した。
「今回はあきらめても、また子供を授かることはできる」
「せっかく生まれても親がいなくて、子供はどうするのよ」
俺も琴子も両親たちも、何度も言った。
それでも、麗は聞かなかった。

結局親友の病院を紹介し、麗の出産は決まってしまう。
それは麗自身の命を奪うことと分かっていて、俺達は止めることができなかった。

病院へ入院し妊娠5ケ月を迎えたころ、
「ねえ賢兄、子供が生まれたら琴子と賢兄で育ててほしいの」
俺と琴子を呼び出した麗に言われ、固まった。

頭ではわかっていた。
麗の病気はかなり進行していて、子供の成長が先か麗の体が限界を迎えるのが先か、いつどうなってもおかしくない状態。無事子供が生まれても麗に育てることはできない。
それに、結婚して数年目の俺と琴子は初めての子を死産して以来子供に恵まれず不妊治療を続けているときだった。

「このままじゃ臨月まで母体が持たない。どれだけ頑張っても早産になる」
幼馴染であり医師である友人に言われ、体が震えた。

「当然のことだが、子供にもリスクはある。必ずしも元気で生まれるとは限らない」
それでも育てていけるのかと、聞かれた。

もう逃げ道はなかった。
目の前には生まれようとする命があって、命がけで生み出そうとする麗がいる。
俺も琴子も何度も何度も話をして、親になる決心をした。
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