好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~
「それにしてもすごいわね」
見渡す限りの日本庭園を眺めながら、言葉に出た。

普段なかなか二人っきりになることができない私たちに、社長が用意してくれた温泉旅行。
大地のことまでお任せして申し訳ないと思いながら、初めての旅行はうれしかった。
「箱根ならうちの常宿があるから予約しておくよ」と言われ、すべてお任せした。

「ちょっと贅沢過ぎないかしら」

広大な敷地の中にある離れの個室。
広い畳の部屋と大きなベットルーム。部屋から続くウッドデッキの先には露天風呂まである。
一泊いくらだろう。つい、そんなことを考えた。

「たまにはいいさ。思い出作りだ」
「でも・・・」

きっとこれって社長の、じゃなくてお父様の支払いなのよね。
そう思うと申し訳ない。

「こうでもしなきゃ旅行なんてこれないだろ」
「うん、まあそうね」

空も仕事が忙しくて休みもなかなか取れないもの。
大企業の重役なんて楽して大金をもらっているように見えるけれど、実際すごい激務だし。
予定したお休みだって、急に仕事なんてことも珍しくない。
それだけ重たい責任を抱えている。

「これからも、一緒にいれるときにはなるべく家族で過ごそう」
「はい」

軽そうなふりをして、人一倍仕事熱心で妥協をしない空。
それは生き方にも言えることで、誰よりも自分に厳しい。
最近では大地もその影響を受けていて、はっきりと自分の意見を言うようになったし、スポーツにも勉強にも熱心になった。
これも空のおかげね。
< 155 / 176 >

この作品をシェア

pagetop