好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~
「本日はありがとうございました」
まず父さんが挨拶をした。

「どうぞ末永くよろしくお願いたします」
創士さんも立ち上がって頭を下げる。

この瞬間、俺はとても不思議な気分になった。

創士さんは萌夏の戸籍上の養父で、俺にとっては生物学上の父。
平石の両親は俺のことを育ててくれた育ての親。
礼にとってうちの両親が親代わりの存在。実際、先日行われた礼と空の結婚式では父さんが礼とバージンロードを歩いた。
空にとっての陸仁おじさんは血のつながらない父。
そして、
萌夏も礼も大地も、結婚することでそれぞれの新しい家族となった。
こうして考えると、家族って何だろう。
血のつながりって何だろう。

「オイッ」
ペシッ。
考え事をしていたらいきなり後頭部をはたかれた。

「何だよ」
振り返るとやはりそこにいたのは空。

「お前、あんまり難しいことばかり考えているとはげるぞ」
「はあ?」
この祝いの席にいきなりなことを言われて、ムッとしてしまった。

「お前のことだから、血のつながりがどうのとか、親だからどうのとか考え込んでいるのかなって思って」
「何だよそれ。空、お前もう酔ったのか?」
「酔ってない。それに俺はざるだって知っているだろう」
「ああ」
そうだった。

そんなところまで陸仁おじさんに似やがって。
空が酒に酔ったところは一度も見たことがない。

「俺は、空みたいにお気楽になれないんだよ」
つい本音が出た。

きっと、これは酒のせいだ。
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