好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~
「何でだよ、お前が望むのは萌夏ちゃんだけだろ」
「そうだけど」

そんなに簡単な話じゃない。
宮家の事情だって、平石の家のこともあった。
みんなにとって一番いい方法をと考えると、

「みんなに良い顔しようとするからだろ」
「空、お前・・・」
絶対酔ってるだろう。

「自分の欲しいものだけのためにわがままになれよ。それで何かを失うなり非難されるときは甘んじて受け入れろ。それくらいの覚悟がなくてどうするんだよ」

そうだな。空はそうやって生きてきたんだよな。
でも、俺は・・・

「遥、お前は自分が思っているほど小さくはないぞ。何が起きてもお前なら耐えられるはずだ。自信を持て」
「しかし」
「何でだよ。平石の御曹司が多少自己中で何が悪いんだよ。もう孝行息子でいる必要もないだろう」

俺だって自分を犠牲にして人に尽くすつもりはない。
ただ、父さんや創士さんの気持ちがわかってしまったから。

「これからは萌夏ちゃんのことを一番に考えろよ」
「ああ」
「会社のことなら俺が手を貸すからな」
「あぁ、ありがとう」

最後にグラスをカチンと合わせて、空は離れていった。

俺とは違う意味で、空はすごい。
あんな風には生きられないけれど、これからは萌夏だけを見て生きようと俺は心に決めた。
< 172 / 176 >

この作品をシェア

pagetop