好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~

幸せの贈り物…萌夏

「萌夏ちゃん、愛されているわね」
「嫌だ、礼さんこそ」

「フフフ」
「ふふふ」
私と礼さんは顔を見合わせて微笑んだ。

お互いに入籍して一年。
新生活の慌ただしさも落ち着いて、すっかり日常モードになった。

「礼さんたち、引っ越ししたんですよね?」
「うん。お父様とお母様の同じマンションに越したの」
「へー」
おじ様たちきっと喜んでいるだろうな。

「平石の家もリフォームしたんでしょ?」
「ええ。敷地の中に離れを立てたんです」
「へー、いいじゃない」
「はい」

私は完全同居でもいいと言ったのに、お父様とお母様が手配してくださった。
二十四時間一緒じゃ疲れるだろうからって、小さなキッチンまでついたかわいいお家。
私と遥はここで新婚生活を送っている。

「ところでメールの件だけれど、」
「ああ、」

私たちは顔を見合わせた。
お互いに言いたいことはあるのに、なかなか言葉が出ない。

「いっそのこと二人で行く?」
「え、でも・・・」
バレたら叱られそう。

「だって、どちらか片方が違ったら気まずいでしょう?」
「そうですけれど・・・」

なぜ今、私と礼さんが頭を抱えているのか。それには訳がある。

一年前ほぼ同じ時期に結婚した私と礼さんはお互いに妊娠を望んでいる。
それは遥も空さんも一緒で、この一年生理が少し遅れるたびに何度も大騒ぎされた。
そのせいで平石家でこの話題は禁句になってしまっている。

「検査薬は陽性だったのよね?」
「はい、二回試しましたから間違いありません。礼さんも?」
「うん。でも、病院に行かないとわからないわよね」
「そうですね」
< 173 / 176 >

この作品をシェア

pagetop