好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~
「パンにする?ごはん?」
いつものようにお母様が遥に聞く。

平石家ではパン食のお父様とごはん食のおじいさまのために両方の用意がされる。
遥はその日によってまちまちだけれど、

「卵とサラダでいいよ。あ、オレンジジュースちょうだい」
やはり食欲のなさそうな遥は、お手伝いさんにオレンジジュースをリクエスト。

この春から平石財閥のグループ企業の一つである平石建設の専務に就任した遥。
学生時代から外部役員として関わってきたとはいえ入社二年目にしては異例の人事で、もちろんプレッシャーも半端じゃないはず。
そのせいかどうかはわからないけれど、最近は仕事が忙しく帰りも遅くてすごく疲れた顔をしている。
倒れなければいいけれど、心配だな。

「野菜スープでも作ろうか?おにぎり食べれそうなら作るけれど?」
少しでも食べてほしくてしつこく聞いてしまう。

「いいよ、萌夏も今日から大学だろ。俺はいいから自分のことをしろよ」
「うん、でも」
遥の体が心配だから。

「母さん、萌夏が準備できるように気を使ってやってよ」
「え、ちょっと、遥」
思わず声が大きくなった。

「あら、ごめんなさいね。ほら萌夏ちゃん、ここはいいから支度なさい」

ニコニコと笑いながらお母様は言ってくださるけれど、
ギロッ。
私は遥を睨んでしまった。
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