好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~
「もう、遥。何でお母様にあんなこと言うのよ」

遥が部屋に戻ったのを見計らって、ノックもせずにドアを開けた。

「ノック」
「はあ?」
「いきなり入ってくる方がマナー違反だろ?」
「・・・」

トン、トン。
わざとらしくドアを叩いて見せる。

「今更?」
どうやら今日の遥は機嫌が悪いらしい。

それでも、私にだって言いたいことはある。
この家の居候としてお世話になっているからには、それなりに気も使う。
ましてや、私と遥がつきあっていることをお母様はじめ平石家の皆さんがご存じなわけで、それなのに遥ったらあんなこと言うから。

「お母様は普段からずいぶん気を使ってくださっているし、今日だって『ここはいいから支度をなさい』って言ってもらっていたの。それでも手伝っていたのは私の勝手で、なのにあんな言い方したら、お母様に申し訳ないじゃない」
「じゃあ、初めから素直に自分の支度をすればいいだろう。萌夏は気を使いすぎなんだよ」
「それは・・・」

確かに、そうかもしれない。
よそ様のお家に居候する以上気は使う。
でもそれは自分で望んでしていることであって、苦にはならない。
今の生活も幸せだとも感じているし。
それよりも気になるのは、遥の機嫌の悪さ。これは、何かありそう。
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