好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~
急ぎ足で自宅マンションに帰ると、大地はいなかった。
部屋の電気も消えていて、人のいた気配もしない。
時刻は7時過ぎ。
小学3年生にしては遅い時間だろうと思う。
今までこんなに遅くまで帰ってこないことはなかった。
外も大分薄暗くなっているし、こんな時間に行くところもないはず。

困ったなと頭を傾けながらマンションを飛び出そうとした時、

ブーブーブー。
携帯の着信。

あれ、高野君?
意外な人からの着信に驚いた。

「もしもし」
「高野です」
「お疲れ様」
「どうも」

ん?
なぜか不機嫌そう。

「どうしたの?高野君が電話なんて珍しいわね」
「そうですか?」

昨年一年は営業部にいた高野君。私は教育係として親しくしていた。
この春、実はうちの社長の息子のような人だと聞かされHIRAISIの企画室に移動になった時には少しショックだった。

「で、どうしたの?」
「大地君がうちにいます」
「はああ?」

なぜ?
大地と高野君に面識があるはずないのに。

「俺の部屋、5033号室なんで迎えに来てもらえますか?」
「わかった。すぐに行くから」

そこで待っていなさいと念を押し、部屋を駆け出した。
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