好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~
マンションについた時点では、大地の素性は知らなかった。
目元と口元に見覚えがあるなとは思っていたが、

「えっ、川田、大地?」
「はい」

名前を聞いて俺の方が動揺した。

「もしかして、お母さんは川田礼さん?」
「はい」

ああ、やっぱり。

「おじさん、お母さんを知っているの?」
「ああ、同じ会社で働いている」
「ふーん」
一瞬マズイって顔をした大地。

どうやら悪いことをしたって自覚はあるようだ。

「なんで学校をさぼったんだよ」
「風邪を」
「嘘だろ」

子供の頃、俺も相当悪ガキだったから大地の気持ちはわかるつもりだ。
それに母一人ってところも同じだし、あの頃の俺を見ているようだ。

「母さんに言うの?」
不安そうに俺を見る大地。

「まさかバレないで済むなんて思っていないだろう?」
「うん、まあ」

きっともうすでに学校から連絡が入っていると思う。
礼さんがどれだけ驚いてショックを受けているかと思うと、かわいそうな気がする。
でも、大地のやり場のない気持ちもわかる。

「お母さんが帰ったら迎えに来てくれるように連絡するから、それまでここにいたらいい」
「わかった」

大地は平気な顔をしているが、本心では不安でしょうがないはずだ。
俺もそうだった。

「さあ、肉まんを温めてやる」
「ヤッター」

やっぱり大地はかわいい。
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