好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~
「随分あからさまですね」
資料に目を落としながら雪丸さんが声だけ掛けてきた。

「そうですか?」

「あまり押しすぎると、逃げられますよ」
「それは、経験談ですか?」
「違います。私と礼はそんな関係では」
「知っています」

10年来の古い友人。
男女関係でないからこそ信頼し、何でも言いあえる親友。
雪丸さんと遥と礼さんはそんな間柄だ。
そのことを疑ったことはない。

「俺は、友人になりたいわけではありません」
「本気ですか?」
「ええ。彼女の過去も、大地の存在も、心に負った傷もすべてひっくるめてもらうつもりです」
「大きく出ましたね」
「若造が何を言っているんだって言いたいですか?」
「そう、ですね」

口先でどんなきれいなことを言っても、今は信じてもらえないだろう。
まずは彼女の心をつかむしかない。
いくら自信家の俺だって、不安がないわけじゃない。
だからこそ口に出して退路を断ち、行動に移すしかない。

「私も遥も、礼の幸せを望んでいます」
「わかっています。任せてください」

ククク。
ククク。
この非常時に、俺と雪丸さんの笑い声が重なってしまった。
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