好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~
昨日、俺は萌夏とけんかをした。
本当に些細なことがきっかけで言い争いとなり、怒ったまま萌夏は家を出て行った。
「何で朝から喧嘩なんてしたのよ。そんな事すればその日一日嫌な気分で過ごすことになるのに」
萌夏が飛び出して行った後母さんにも言われ、俺だって反省していた。

夜、帰ったらちゃんと謝ろう。
思っていることをきちんと伝えて、萌夏の言い分も聞いて、これからはもう少し二人の時間を持とうと提案するつもりでいた。
それが・・・

「萌夏ちゃんの行き先に心当たりはないのか?」
電話の向こうのおじさんも心配そうにしている。

「心当たりは全部あたりましたが、まったくわかりません」
「大学には行ってなかったんだよな?」
「ええ。電車にも乗っていないようなので、家から駅までの間で何かあったんだろうと思うんですが・・・」
「警察には?」
「昨日のうちに届けは出しましたが、昨日の今日ですし、未成年でもないのでしばらくは動いてくれそうにありません」
「そうか」
そうだろうなと、おじさんの声も沈んでいく。

二十歳を過ぎた成人が一晩帰ってこないくらいでは、日本の警察は動いてくれない。
当たり前といえば当たり前かもしれない。
でも、萌夏は黙って消息を絶つような人間じゃない。
そんなことをすれはみんなが心配するってわかっているから、するはずがない。
きっと、いや絶対に、何かのトラブルに巻き込まれたんだ。
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