好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~
私は肉親の愛情を感じることなく育った。
誰かに守られた記憶もない。
唯一家族を感じることができたのは平石家にいた2年間。
そこで、私は愛されるってことと愛するってことを教えてもらった。
平石のおじさまもおばさまも実の子のように私を愛してくださったし、大地のこともかわいがってくださった。
お二人を見て、ああ自分も大地のことを大切に愛していこうと決心した。
けれど、自分が大地を愛することと、誰かに守られることは勝手が違う。

「ダメだよ、もう一口」
「もう・・・無理」

昨日のお昼から何も口にしていない私は何か食べないといけないんだと思う。
目の前に並べられた朝食もおいしそうで、普段なら喜んで食べられただろう。
でも、今はまだ食欲がなくて・・・

「ほら、フルーツだけでもいいからもう少し食べて」

どこから持ってきたのか、桃缶を器に入れてきた空が一口サイズにカットしてフォークで口元まで運んでくれる。

「ねえ、恥ずかしいんだけど」

さすがに、あーんなんて出来ない。

「仕方ないでしょ、自分で食べないんだから」
「だって」
「ほら」

・・・パクン。
あれ、美味しい。

ククク。
空が笑っている。
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