好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~
「ねえ、もうからかうのはやめて。私は誰とも恋をする気はないの」
大地のために生きるって決めたんだから。

「俺は、君をあきらめる気はないよ」
「だからそれが、」
迷惑なのよと言いかけた口を

うぅっ。
空の唇に塞がれた。

必死に離れようとするけれど、ピクリとも動かない。
そのうちギュッと抱きしめられて、私の力が抜けていった。

「ひどい」
やっと離れた空に恨み言を言ってみる。

「俺は、本気だ」

「だからって」
こんなやり方は卑怯。

「もう恋をしないなんて理由で振られるのは納得できない。俺を見て、知って、そのうえで好きになれないなら仕方がないけれど、初めから逃げるのはなしだ」
「空」
「お願いだから、ちゃんと俺を見て」

悲しそうな目で私を見る空がゆっくりと近づいてきて、

チュッ。
もう一度唇が重なった。

なぜだろう、私も抵抗しなかった。

開けられた唇の隙間から、お互いの温かさが流れ込んでくる感覚。
心の奥にしまい込んでいた感情がチクチクと胸に刺さる。
こんな気持ちになったのはいつぶりだろう。
もう感じることのない気持ちだと思っていたのに・・・

きっと今の私はものすごく弱っていて、だから空を受け入れてしまった。
元気になればいつもの自分に戻れると言い聞かせた。
< 60 / 176 >

この作品をシェア

pagetop