好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~
「萌夏さんは、優しい子だね」
おじいさまが消えた後も部屋の入り口に立っていた男性がぽつりとつぶやく。

優しい子。
自分ではそんなことないと思っている。
わがままだって言うし、意地悪だってする。

「黙って連れてこられて、それでもおとなしく話を聞いている時点で、君は優しいいい子だよ」

そうだろうか?
私はただ、おじいさまの話が聞きたかっただけ。
一刻も早く遥に連絡を入れなくちゃと思っていることに変わりはない。

「はい、どうぞ」
差し出されたのは私のカバン。

「えっと・・・」
お礼も言うのも変な気がして、私は男性を見た。

「家に連絡をしたいだろ?」
「そう、ですね」

2日も連絡が取れなければ、きっと心配していることだろう。
大騒ぎになっているのかもしれない。
でも、

「よかったら、少し話をしてもいいかなあ」
「え?」

目の前の男性もまたおじいさま同様悪い人には見えない。
黒いオーラを感じることはないし、誠実そうな眼差しはどこかで見覚えがあるような・・・

「君がここに連れてこられた理由を聞きたくないかい?」
「聞きたいです。教えてください」

信用できるかどうかはわからないけれど、まずは理由とやらを聞いてみたい。
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